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    遠藤周作が昭和35年に書いた原稿が、46年後に発見されてこの本(元は単行本)になった。手紙や文章の書き方をやさしく教える内容。病人への見舞いの手紙、彼女を上手くデートに誘うラブレター、告白されて断るときの心得(女性編)、お悔やみ、など、

    軽い読み物なのだが、遠藤周作がいかに人と違う文章、凡庸でない文体を確立することを大切にしていたかがよくわかる。文章力を鍛えるための「ようなゲーム」を日常的にバスに乗りながら行っていたそうだ。これは誰でも簡単に取り組めるが、うまくやるのは難しいゲームだ。

    「ようなゲーム」とは、眼に見えたもの、耳に聞こえたものを形容する言葉を、

    (1)普通、誰にも使われている慣用句は使用せず
    (2)しかもその名詞にピタリとくるような言葉を

    見つけるというゲームである。

    夕日のことを

    「燃える火の玉のように」

    というのは慣用句的で避けなければならない。代わりに、

    「大きな熟れた杏のように」
    「赤くうるんだ硝子球のように」

    などという有名作家達の名文が挙げられる。

    文章の極意(文脈的にはラブレターの極意なのだが)は抑制法(当たり前のことをぜんぶ書くな)と転移法(ナマではなく別の言葉で)だと看破する。実体でなく影の方を描くと、効果的に情景が立ち上がるという話、わかりやすいが実践は結構難しい話だ。

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